「気でも狂ったのか?」友人に本気で心配されました
2016年、わたしは青森でコーヒー豆の焙煎屋をはじめました。
本当に美味しいコーヒーをお客さまへお届けしたい、
その一心で独立しました。
本当に美味しいコーヒーとは、どんなコーヒーのことなのでしょうか?
全国から取りよせたコーヒー豆と、わたしが焙煎したコーヒーを飲み比べながら、自分なりのひとつの考えにいたりました。
それは、品質のよい素材をつかった、焙煎したての香りよいコーヒーでした。
しかし、このようなコーヒーはあまり普及していません。
残念ながら、新鮮なコーヒーというのは、市場にあまり出回っていないのです。
焙煎してから長い時間がたち、香りのぬけた味が広く浸透しているのが現状でした。
そのため、わたしがこれこそ本物だ!と思って、用意したコーヒーは、時には一口すすって、あとは飲まれない、ということもありました。
カップに残ったコーヒーを見て、胸を締めつけるような切なさを感じたことは、
今でも忘れられません。
好きだからこそ徹底的にこだわる
また、コーヒーを選ぶときの基準は「価格」がほとんどでした。
本当に美味しいコーヒーをつくるには、最高級の素材を使用し、いいものだけをひと粒ひと粒、選別しなければなりません。
仕入れにかかる費用と、人件費がかさむばかりでした。
この現状のなかで、受け入れられるコーヒーをつくるにはどうすればいいのでしょうか?
「利益を減らそう」。
わたしはこう結論づけました。
美味しいコーヒーが好きだから、品質への妥協はしたくない。
いいものを安く、これしかないとわたしは考えたのです。
いまのわたしにできることは、美味しいコーヒーのためにできる手間を惜しまないこと。
利益が減っても、第一にコーヒーの本当の美味しさを届けることだと考えました。
本当に美味しいコーヒーのために
大好きなコーヒーのために、こだわりを捨てない、とわたしは決意しました。
商売として考えれば、ニーズに沿わないやり方かもしれません。
しかし、お客さまから「美味しかったよ」というお声をいただき、
一生懸命にコーヒーづくりに取り組む姿勢の大切さを、
あらためて教えていただきました。
こだわりを捨てずに、コーヒーづくりをしてきたことで、
たくさんの気づきが毎日のようにあります。
その一つ一つが、本当に美味しいコーヒーへとつながっていると
私は思います。
「本当に美味しいコーヒーをお届けする。」
そのためにできることは惜しまず、自信をもって提供できるコーヒーを作りつづける。
これが、わたしのコーヒーに対する信念なのです。
和田珈琲 焙煎士 和田 誠